仮想通貨税制はどこへ向かう?JBA・JCBA・JVCEAが求める「2024年度税制改正要望」の全貌

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Web3時代の幕開けとともに、暗号資産(仮想通貨)は私たちの金融活動や経済システムに深く浸透しつつあります。しかし、その急速な進化とは裏腹に、日本の仮想通貨税制は多くの課題を抱えているのが現状です。

高すぎる税率、複雑な計算プロセス、そして過大な相続税リスク。これらの問題は、投資家の活動を萎縮させ、国内のWeb3産業の成長を阻害する要因となっています。

こうした状況を打開すべく、日本の主要な仮想通貨業界団体である日本ブロックチェーン協会(JBA)日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)、そして日本暗号資産取引業協会(JVCEA)が、政府に対して具体的な「2024年度税制改正要望」を提出しました。

この記事では、これらの業界団体が一体どのような要望を掲げ、現在の税制の何が問題だと訴えているのかを徹底的に解説します。さらに、税制改正が実際に実現するまでの道のり、そして今後の動向に注目すべきポイントを深掘りし、読者の皆様がWeb3時代の税制を深く理解し、賢く備えるための情報を提供します。

果たして、仮想通貨税制は投資家にとってより友好的なものへと変わっていくのでしょうか? その全貌を見ていきましょう。

なぜ今、仮想通貨の税制改正が求められるのか?

このセクションでは、仮想通貨の税金がなぜ問題視されているのか、そしてWeb3時代において税制改正がなぜ不可欠なのかを深く掘り下げます。

現状の課題と投資家の声

現在の日本の仮想通貨税制は、主に以下のような点で投資家や企業から大きな不満の声が上がっています。

  • 高すぎる税率: 仮想通貨の利益は原則として「雑所得」に区分され、給与所得など他の所得と合算される「総合課税」が適用されます。これにより、所得額によっては最大で55%(所得税+住民税)もの高い税率が課される可能性があります。これは、一律約20%の分離課税が適用される株式等の譲渡益と比較しても非常に重い負担です。
  • 損失の繰り越し不可: 株式投資などでは、年間の損失を翌年以降最大3年間繰り越して、将来の利益と相殺できる「損失繰り越し控除」という制度があります。しかし、仮想通貨投資ではこの制度が認められていません。例えば、ある年に300万円の損失を出し、翌年に300万円の利益を出した場合、合計で損益はゼロですが、翌年の300万円の利益に対しては税金がかかります。これは投資家にとって極めて不利な状況を生み出します。
  • 複雑な計算プロセス: 仮想通貨は、異なる通貨への交換(例:ビットコインからイーサリアムへ)のたびに損益計算と課税が発生します。DeFi(分散型金融)やNFT(非代替性トークン)取引が活発化するにつれて、取引履歴は膨大になり、その損益計算は非常に複雑で多大な労力を要します。
  • 過大な相続税リスク: 仮想通貨を相続する際には、その評価方法や取得費に関する特例の適用がないため、場合によっては相続した資産の価値を上回る税金が発生するリスクさえあります。後述する「相続税110%」の事例は、その極端な例として問題視されています。

Web3時代の経済成長と暗号資産の可能性

暗号資産は単なる投機対象ではなく、ブロックチェーン技術を基盤としたWeb3エコシステムの中核を成す存在です。DeFi、NFT、ブロックチェーンゲームなど、新たな経済活動やビジネスモデルが次々と生まれており、これらは日本のデジタル経済の成長を牽引する可能性を秘めています。

しかし、現行の税制は、このような新しい技術やビジネスの発展を阻害する要因となりかねません。より合理的で、国際競争力のある税制へと見直すことは、日本のWeb3産業の活性化と経済成長のために不可欠であると、業界全体が強く訴えているのです。

業界団体の役割と税制改正要望の重要性

JBA、JCBA、JVCEAといった業界団体は、それぞれの専門性と立場から、仮想通貨に関連する企業や投資家の声をまとめ、政府や関係省庁に届ける重要な役割を担っています。税制改正要望は、現行制度の問題点を指摘し、より良い制度への具体的な改善案を提案するものです。

これらの要望が政策決定プロセスに影響を与え、最終的に税制改正として実現すれば、それは日本の仮想通貨業界全体にとって大きな転換点となるでしょう。

税制改正要望とは?その「位置付け」と「実現への道のり」

このセクションでは、業界団体が提出する税制改正要望がどのような位置付けであり、実際に税制改正が実現するまでにはどのようなプロセスを経るのかを解説します。

要望書提出は「提案」に過ぎない

業界団体が政府に提出する税制改正要望書は、あくまで「提案」であり、その内容がただちに法制化されるわけではありません。これは、業界が直面している課題や求める改善点を、政策立案者に伝えるための重要な第一歩です。

与党税制調査会の承認が必要なプロセス

日本の税制改正は、与党(現在の自民党・公明党)の「税制調査会」が主導して議論を進めるのが通例です。業界からの要望は、この税制調査会で議論される様々な意見や提案の一つとして検討されます。

税制調査会では、要望の実現可能性、財政への影響、他の制度との整合性、社会全体への影響など、多角的な視点から慎重な議論が重ねられます。そのため、要望がそのまま受け入れられることは少なく、多くの場合、調整や修正が加えられます。

税制改正大綱への記載が「確定」のサイン

毎年12月頃に、与党税制調査会は次年度の税制改正の基本的な方針と具体的な内容を盛り込んだ「税制改正大綱」を公表します。この大綱に記載された内容が、翌年以降の税制改正法案として国会に提出され、成立すれば確定となります。

したがって、今回の業界団体の要望は、今後の税制改正に向けた議論の出発点であり、税制改正が確定したわけではない点に注意が必要です。投資家としては、税制改正大綱の内容を特に注視する必要があります。

JBA、JCBA・JVCEAの「5つの税制改正要望」を深掘り

ここでは、各業界団体が提出した具体的な要望内容を一つずつ詳細に解説します。JBAとJCBA・JVCEAでは、一部要望内容に差異があるため、その点も踏まえて理解を深めましょう。

各業界団体の主要税制改正要望比較
要望内容 JBA JCBA・JVCEA 概要
申告分離課税・損失繰り越し
(国内取引所・ウォレットのみ)

(国内・海外取引所、ウォレット全て)
最大55%の総合課税から一律20%の分離課税へ。損失の3年間繰り越しも導入。
暗号資産交換時の非課税化 暗号資産間の交換では課税せず、法定通貨(円など)に換金時のみ課税。
相続税における「取得費加算の特例」適用 相続により取得した暗号資産売却時の譲渡所得税を軽減する特例を適用。
暗号資産寄付時の「みなし譲渡課税」見直し 暗号資産を寄付した際に発生する課税を見直し、非課税または軽減措置を導入。
特定譲渡制限付き暗号資産の時価評価見直し 法人が保有する特定の暗号資産の時価評価義務の適用要件を緩和。
暗号資産の所得区分を「譲渡所得」へ 雑所得から、投資対象としての実態に即した譲渡所得へ区分変更。

分離課税・損失繰り越し控除の導入

現在の仮想通貨の利益は、他の所得と合算して課税される「総合課税」であり、所得税の最高税率と住民税を合わせると最大で55%の税率が課される可能性があります。また、株式投資とは異なり、損失を翌年以降に繰り越して利益と相殺する制度もありません。

業界団体は、この現状を改善し、一律20%の「申告分離課税」を導入すること、そして3年間の「損失繰り越し控除」を認めることを強く要望しています。これが実現すれば、税負担が大幅に軽減され、より健全な投資環境が整うと期待されています。

ただし、この要望には両団体間でわずかな差異があります。

  • JBA: 国内の仮想通貨取引所および自己管理ウォレットでの取引に限り分離課税を適用すべきと主張しています。海外取引所での取引は総合課税のままでも良いというスタンスです。
  • JCBA・JVCEA: 国内外の取引所やウォレットを問わず、全ての暗号資産取引に分離課税を適用すべきと主張しています。

暗号資産交換時の非課税化

現行の税制では、ある仮想通貨を別の仮想通貨に交換した場合でも、その交換によって利益が確定したとみなされ、課税対象となります。例えば、ビットコインでイーサリアムを購入した際、ビットコインの購入時からの値上がり益が課税対象となるのです。

このルールは、DeFiやNFT取引など、様々な暗号資産を頻繁に交換する活動において、膨大な損益計算の手間と税負担の複雑さを生み出しています。

両団体は、このような状況を改善し、暗号資産同士の交換時には課税せず、最終的に法定通貨(日本円など)に換金した時点でのみ課税するよう求めています。これが実現すれば、投資家や事業者の計算負担が大幅に軽減され、より活発な暗号資産のエコシステム構築に貢献するでしょう。

相続税における「取得費加算の特例」の適用

仮想通貨を相続する際、その評価方法や税率について特別な課題が存在します。特に問題視されているのが、他の多くの金融資産に適用される「取得費加算の特例」が仮想通貨には適用されない点です。

取得費加算の特例とは、相続した資産を売却する際に、支払った相続税の一部を取得費に加算することで、売却時の譲渡所得税を軽減できる制度です。これが適用されないため、以下の様なケースが発生し得ます。

例えば、祖父が100万円で購入したビットコインが、死亡時に100億円に値上がりしていたとします。この100億円を相続した場合、相続税が54億円、さらにその後の売却時に譲渡所得税(取得費加算の特例が適用されないため)が約52億円かかり、合計で106億円もの税金が発生する可能性があります。 相続したビットコインの価値が100億円であるにもかかわらず、税金がそれを上回るという不合理な事態が発生してしまうのです。

両団体は、仮想通貨も他の金融資産と同様に、この特例を適用することで、不合理な税負担を是正し、安心して次世代に資産を継承できる環境を整備することを要望しています。

暗号資産寄付時の「みなし譲渡課税」の見直し

社会貢献や支援のために暗号資産を寄付しようとしても、現行の税制には大きな壁があります。それは、暗号資産を寄付した場合に「みなし譲渡課税」が適用されることです。

みなし譲渡課税とは、実際の売買がなくても、寄付などの形で資産が移転した場合に、時価で売却したものとみなして利益に課税する制度です。例えば、5万円で購入したイーサリアムを、時価55万円の時に寄付した場合、差額の50万円が利益とみなされ、その利益に対して税金が課されます。つまり、寄付をしたにもかかわらず、納税義務が発生してしまうのです。

この制度は、暗号資産を通じた社会貢献活動を阻害する要因となっています。両団体は、他の税法に存在する寄付税制(税金が免除される制度など)を参考に、暗号資産の寄付についても非課税化や軽減措置を導入し、社会貢献活動を後押しする税制に見直すことを要望しています。

特定譲渡制限付き暗号資産の時価評価見直し(JBAのみ)

この要望はJBAのみが提出しているもので、企業が暗号資産を保有する際の税務上の課題に焦点を当てています。

現状、企業が保有する暗号資産は原則として決算時に「時価評価」を行い、含み益・含み損を損益として計上する必要があります。これは、市場価格の変動が大きい暗号資産において、企業の財務状況を不安定にさせる要因となります。

ただし、「特定譲渡制限付き暗号資産」に該当する場合、一定の要件を満たせば時価評価が免除される特例があります。しかし、この特例の適用要件が非常に厳しいため、多くの企業が恩恵を受けられていません。

JBAは、この特定譲渡制限付き暗号資産の要件を緩和することで、企業が安心して暗号資産を保有・活用できる環境を整え、国内でのWeb3ビジネスの発展を後押しすることを要望しています。

暗号資産の所得区分を「譲渡所得」へ(JCBA・JVCEAのみ)

この要望はJCBA・JVCEAのみが提出しており、暗号資産の根本的な税務上の位置付けに関するものです。

現在の日本の税制では、暗号資産は「支払い手段」であるという側面から、その利益は「雑所得」に分類されています。これが、先述した総合課税や損失繰り越し不可の要因の一つとなっています。

しかし、多くの投資家にとって、ビットコインなどの暗号資産は支払い手段として利用されるよりも、「投資対象」としての資産性が重視されています。株式や不動産と同様に、長期的な値上がりを期待して保有するケースが一般的です。

JCBA・JVCEAは、このような実態に合わせ、暗号資産の所得区分を「譲渡所得」に変更することを求めています。譲渡所得に分類されれば、他の金融商品と同様に分離課税の対象となり、税負担の軽減と制度の簡素化が期待されます。

まとめ:要望の核心と税制改正実現への鍵

日本の仮想通貨業界団体が政府に提出した2024年度税制改正要望は、日本のWeb3エコシステムと投資環境の健全な発展にとって極めて重要な意味を持ちます。共通する主要な要望は以下の通りです。

  • 分離課税・損失繰り越し控除の導入: 株式などと同様に、一律20%程度の税率と損失繰り越しを求める。
  • 暗号資産交換時の非課税化: 暗号資産間の交換では課税せず、法定通貨への換金時のみ課税する。
  • 相続税における「取得費加算の特例」の適用: 不合理な相続税負担の是正。
  • 暗号資産寄付時の「みなし譲渡課税」の見直し: 社会貢献活動の促進。

これらの要望の多くは、暗号資産を支払い手段だけでなく、「金融商品」としての資産性・投資性を正しく評価し、既存の金融商品と同様の税制を適用すべきであるという根本的な主張に基づいています。

特に、分離課税の実現に向けた最大の鍵となるのは、金融庁の動向です。金融庁は、2023年6月に公表された金融審議会の報告書において、暗号資産について「支払い手段性だけでなく資産性・投資性があることに鑑み、金融商品としての取り扱いを検討すべき」との議論をしています。

この議論が具体的な制度設計に繋がり、「金融商品」としての区分変更が進めば、分離課税の導入も一気に現実味を帯びてくるでしょう。与党税制調査会での議論の行方とともに、金融庁の動向も注視し続ける必要があります。

読者の皆様へ:Web3時代の税制を理解し、賢く備えるために

仮想通貨税制の改正は、多くの投資家にとって待望のニュースとなる可能性がありますが、その実現にはまだ時間と政治的プロセスを要します。しかし、業界団体による具体的な要望が提出されたことは、確実に変化への一歩を踏み出したことを示しています。

読者の皆様には、最新の税制改正動向に常にアンテナを張り、その内容を深く理解することが求められます。変化の激しいWeb3の世界では、税制に関する正確な知識こそが、賢く資産形成を進めるための強力な武器となります。

この記事を通じて、日本の仮想通貨税制の現状と未来に関する理解が深まり、皆様のWeb3時代における知的好奇心と投資活動の一助となれば幸いです。不明な点や複雑な税務処理については、必ず税務の専門家にご相談ください。

信頼できる情報源を定期的にチェックし、来るべき税制改正に備えましょう。

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