現在の仮想通貨市場は、ビットコインが一時11万ドルを突破するものの、その後反落するなど、複雑な局面を迎えています。しかし、一部の市場参加者からは「ビットコインが今後17万ドルに到達する可能性がある」という楽観的な予測も聞かれます。果たして、この予測は現実的なのでしょうか?そして、その根拠は何なのでしょうか?
本記事では、この注目の「17万ドル」予測の背景にあるM2マネーサプライの動向、最新の米国経済指標、そして機関投資家の参入動向や米国における仮想通貨規制の進捗まで、多角的な視点から深掘りします。複雑な市場要因を体系的に理解し、自身の知見を深めるための土台を築きましょう。
米国経済指標が示す現状:利下げ期待の後退と市場の「楽観論」
最新の米国経済指標は、仮想通貨市場を含む金融市場全体に大きな影響を与えています。ここでは、主要な指標が示す現状と、それに対する市場の反応を解説します。
注目された米雇用統計とISM非製造業PMIの結果
最近発表された米国の非農業部門雇用者数は前月比で14.7万人増加し、失業率も予想外に低下しました。これは、米国経済における雇用の堅調さを示唆しています。さらに、経済のサービス部門の景況感を示すISM非製造業PMIも50.8ポイントに上昇し、50を上回ることで経済活動の拡大が示されています。これらの数値は、現在の米国経済が比較的健全であることを裏付けるものです。
しかし、これらの強い経済指標は、市場の利下げ期待を後退させる結果となりました。9月のFOMC(連邦公開市場委員会)での利下げ確率は以前の74%から68%に減少するなど、CME FedWatchツール上でも利下げが遠のく様子が示されています。
強い経済指標下でリスクオンが進む背景
通常、利下げ期待の後退はリスクオフ(リスク資産からの資金引き上げ)につながることが多いですが、今回の市場はむしろリスクオンの反応を示しました。この背景には、トランプ氏の関税政策が雇用に与えるダメージへの懸念が和らいだこと、そしてインフレが制御されつつも経済成長が維持されるという、いわゆる「ソフトランディング」への期待が高まっていることが挙げられます。現状の米国経済は、雇用が強く、インフレも加速していないという認識が広がり、「アメリカ経済は強い」という楽観的な見方が市場に浸透しつつあると言えるでしょう。
財務長官からは、7月に利下げが行われない場合、9月にはより大幅な利下げが必要になるという言及もありましたが、現在のところ、市場は全体として経済の底堅さを評価し、リスク資産への投資意欲を維持している状況です。
ビットコイン「17万ドル」予測の根拠:M2マネーサプライとの連動性
では、冒頭で触れたビットコイン17万ドル到達の予測は、どのような根拠に基づいているのでしょうか。その強力な根拠の一つに、M2マネーサプライとの連動性が挙げられます。
M2マネーサプライとは何か?
M2マネーサプライ(M2マネー供給量)とは、世の中に出回っているお金の総量を示す経済指標の一つです。具体的には、現金、預金、そして比較的流動性の高い預金(普通預金、定期預金など)を含みます。この指標が増加するということは、市中にお金が増え、流動性が高まっていることを意味します。現在の世界では、各国の中央銀行による金融緩和策などにより、M2マネーサプライは歴史的な高水準を更新し続けています。
ビットコインとM2マネーサプライの驚くべき連動
過去のデータ分析によると、ビットコインの価格はM2マネーサプライの変動に、おおよそ100日前後遅れて連動する傾向があることが指摘されています。これは、世界中で通貨の流動性が高まる中で、余剰資金の一部が希少性の高い資産であるビットコインに流入するというロジックに基づいています。
もちろん、常に完璧に連動するわけではありませんが、M2マネーサプライの上昇とビットコイン価格の上昇が連動している時期は、比較的長期的な上昇トレンドが続く傾向が見られるとされています。現在のM2マネーサプライの推移が示す水準は、ビットコインが17万ドル付近に到達する可能性を裏付けているという分析も存在します。米国の仮想通貨市場をハブ化しようとする動きや規制緩和の取り組みが進む中で、今後も機関投資家が参入すれば、この連動性が維持される可能性は十分に考えられます。
機関投資家の積極参入とアルトコイン市場の変化
米国が仮想通貨の国際的な中心地となることを目指し、規制緩和や新たな法案の整備に積極的に取り組む中、機関投資家の市場への参入が加速しています。この動きは、ビットコインだけでなく、アルトコイン市場にも大きな影響を与えています。
仮想通貨を準備資産として採用する企業の増加
すでに、複数の上場企業が仮想通貨を財務戦略の一部として、あるいは準備資産として組み入れ始めています。例えば、米国の上場企業であるアンバーインターナショナルは、37億円を調達して仮想通貨準備金戦略を加速させ、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、ソラナ(SOL)への投資を実施しています。また、米国のゲーム企業であるシャープリンクゲーミングは、イーサリアムを積極的に購入しており、膨大な量のイーサリアムを保有していると報じられています。
さらに、ビットマイマージョンテクノロジーズやビットデジタルといった企業も、イーサリアムを財務戦略の一環として保有する方針を発表するなど、ビットコイン以外のアルトコインへの注目度も高まっていることが分かります。
イーサリアム現物ETFへの巨額流入とOTC取引の活況
イーサリアム現物ETF市場も非常に活況を呈しており、特に直近の流入額は非常に大きいものとなっています。これは、機関投資家からのイーサリアムへの関心が高まっていることを明確に示唆しています。
また、市場の拡大を示すもう一つの兆候として、OTC(Over The Counter:店頭)取引におけるアルトコインの取引増加が挙げられます。OTC取引とは、証券取引所を介さず、企業や大口投資家が直接行う相対取引のことで、市場への影響を最小限に抑えつつ大量の取引を行う際に利用されます。2025年上半期には、OTC取引高全体の16.7%をアルトコインが占めるまでに増加していると指摘されています。特に取引が活発なアルトコインは以下の通りです。
| 順位 | アルトコイン名 |
|---|---|
| 1位 | ソラナ (SOL) |
| 2位 | ライトコイン (LTC) |
| 3位 | XRP (リップル) |
| 4位 | トロン (TRX) |
| 5位 | エイダ (ADA) |
ステーブルコインの取引も増加傾向にあり、これは仮想通貨市場全体の流動性向上と拡大を示唆するポジティブな要因と見なされています。
米国で加速する仮想通貨規制の動向:「暗号通貨週間」の意義
仮想通貨市場の本格的な成長には、明確で公平な規制環境の整備が不可欠です。米国では、この課題に対し、画期的な取り組みが進行しています。
共和党主導の「暗号通貨週間」とは?
米国共和党は、仮想通貨に関する3つの主要法案を検討するため、「暗号通貨週間」を宣言しました。これは、7月14日から18日までの期間に、これらの法案を積極的に検討し、進展させることを目的としています。この取り組みは、米国がデジタル資産分野におけるリーダーシップを確立しようとする強い意志の表れと言えるでしょう。
注目すべき3つの仮想通貨関連法案
「暗号通貨週間」で議論される主要な法案は以下の3つです。
- 仮想通貨市場構造法案: この法案は、仮想通貨が「証券」としてSEC(証券取引委員会)の管轄になるのか、それとも「商品」としてCFTC(商品先物取引委員会)の管轄になるのかという、長年の議論に終止符を打つことを目指しています。この定義の明確化は、業界に法的安定性をもたらし、イノベーションを促進するために極めて重要です。グレイスケールが提案していたバスケット型現物ETFの承認見送りが、この法案の成立を待つためである可能性も示唆されています。
- ステーブルコイン法案: これは、特に「ジーニアス法案」として知られており、すでに上院を通過しています。下院での承認が進めば、ステーブルコインの規制枠組みが確立され、より安全で透明性の高い利用環境が整うことが期待されます。
- 中央銀行デジタル通貨(CBDC)法案: この法案は、反CBDCを目的としており、米国におけるCBDCの全面的な禁止を目指すものです。一部で懸念されるプライバシー問題や政府による監視強化のリスクを回避し、分散型デジタル資産の優位性を保つための動きとして注目されています。
これらの法案の進展は、今後の米国における仮想通貨の法的地位と市場の成長に大きな影響を与えることになります。
最新テクニカル分析:主要仮想通貨の現状と今後の展望
市場を動かすファンダメンタルズ要因を理解した上で、ここでは主要な仮想通貨の現在の価格動向と今後の技術的な展望について見ていきましょう。
ビットコインの価格動向と重要サポート・レジスタンス
ビットコインは現在、10.8万ドル付近で推移しており、これまで試されてきた11万ドルの壁を明確に突破できていない状況です。しかし、ビットコイン現物ETF市場には継続的な資金流入が見られ、これは市場の底堅さを物語っています。
生産ヒートマップ(投資家が清算される価格帯を示す指標)を見ると、10.8万ドル付近にはロングポジション(買い持ち)の清算ポイントが集中しており、一方、11.05万ドルから11.2万ドルにかけては、売り圧力となる厚い板(注文)が確認できます。これは、多くの投資家がこの価格帯を意識していることを示しています。
テクニカル的には、ビットコインは現在のレンジ相場の上限付近に位置しており、本格的な上昇には11万ドルを明確に突破する必要があります。4時間足の移動平均線がゴールデンクロスを形成し、価格を下支えしていることから、一時的な下落があったとしても、再び11万ドルへの挑戦が期待されます。この水準を上抜ければ、今年の秋から冬にかけて12.8万ドル付近までの上昇も視野に入ると考えられています。
主要アルトコイン(ETH, XRP, UNI, SOL, XDC)の分析
- イーサリアム(ETH): 現在2,559ドル付近で推移しており、移動平均線の密集を上抜けました。短期的な押し戻しが見られる可能性もありますが、移動平均線がゴールデンクロスを形成しようとしており、底堅い動きが予想されます。2,440ドル付近のサポートラインも価格を支える要因となるでしょう。
- XRP(リップル): 2.23ドル付近で推移し、2.3ドルのレジスタンスラインをまだ突破できていません。しかし、日足レベルで主要な移動平均線を上抜けており、今後ゴールデンクロスが形成されれば、さらなる上昇の可能性も考えられます。
- ユニスワップ(UNI): 現在7.35ドルで、7.5ドルから8ドル付近の抵抗帯に上値を抑えられています。しかし、安値を切り上げる動きが見られ、短期的に下落してもすぐに回復する可能性が高いと見られています。移動平均線が追いつくことで、レンジ相場や三角持ち合いを経て、最終的に上方向へのブレイクアウトが期待されます。
- ソラナ(SOL): 152ドル付近で、152ドルから153ドル付近の抵抗帯に直面しています。テクニカル的には逆三尊のパターンを形成しており、ネックラインである153ドルを明確に突破できれば、大きな上昇につながる可能性を秘めています。
- XDC(シンフィン): 0.060ドル付近で推移し、0.058ドルの水平線で下げ止まっています。RSI(相対力指数)でもダイバージェンスが確認されており、短期的には反発が期待されます。ただし、長期的な視点ではまだ上値が重く、下落トレンドが終わったとは見られないため、注意が必要です。
その他の市場動向(ゴールド、ドル円)のサマリー
ゴールドは現在3,342ドル付近で、市場最高値圏でのレンジ相場が続いています。一方、ドル円は144.31円まで急上昇しました。これは、米国での利下げ期待が遠のき、ドルが買い戻されたことが背景にあると考えられます。これらの市場の動きは、仮想通貨市場におけるリスク選好度合いを測る上で、間接的ながら重要な指標となります。
まとめ:仮想通貨市場の未来を拓く鍵
今日の仮想通貨市場は、ビットコインの17万ドル到達の可能性が取り沙汰される一方で、11万ドルの壁を突破しきれないという現状にあります。しかし、その背景には、M2マネーサプライとの強力な連動性、堅調な米国経済指標、そして機関投資家の積極的な参入といったポジティブな要因が複合的に作用しています。
特に、米国で進行中の「暗号通貨週間」における法案審議は、市場に法的明確性と信頼性をもたらし、さらなる大規模な資金流入を促す可能性を秘めています。ステーブルコイン法案の進捗や、仮想通貨の分類に関する法案の行方は、今後の市場の健全な発展にとって極めて重要です。
ビットコインが現在のレジスタンスを突破し、次の目標価格へと向かうためには、これらのファンダメンタルズ要因が引き続き市場を力強く後押しすることが鍵となります。今後の「暗号通貨週間」での具体的な動きや、米国の金融政策の方向性、そして機関投資家のさらなる動きに注目が集まるでしょう。
仮想通貨市場は、常に変化し続けるダイナミックな世界です。本記事で解説した多角的な視点から市場を捉え、最新の情報を継続的に学習することが、この分野で知見を深め、未来の可能性を捉えるための最も確かな道筋となるでしょう。
関連する基本書籍や信頼できる情報源を参照し、自身の知識と理解を深めることで、より強固な土台を築き、このエキサイティングな市場の次なるステップに備えましょう。

